優秀なクリエイターは感覚と理論の両方をバランスよく兼ね備えている

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ネット上に時折アップされている著作権関連の訴状なんかを読んでると、一言で済ませられることが長々と書かれてたりします。例えば、このロゴがいかにパクリなのかを「この角度がどうのこうの」という具合に1000字くらい使って事細かく説明してたりする。画像を見比べれば一目瞭然なのにです。

なぜ見れば分かるものを説明すると長くなるのか。感覚的なものを言語で明確にすることは極めて難しいからです。抽象的な表現なら、短くてすむのです。例えば、誰かに頼む時に使う「もっとシンプルにして」「バランスをとって」などです。

でも、こうした抽象的な表現は、お互いに感覚を共有できていないと理解には至りにくい。だから、その分言葉でのサポートを必要とするのです。どこまでを言葉でサポートするかという程度問題になりますが、感覚で伝えるのがほとんど不可な相手なら、まずは感覚を言語に落とす作業から始まるので、膨大なコミュニケーションコストが必要になります。ゆえに仕様書の量が膨れ上がっていきがちですが、たいていは伝えることを断念して妥協する方向になるみたいですね。

ちなみに、TCDの強みの1つに商品開発における仕様書がないことが挙げられます。企画段階である程度大枠の方向性もあって、進捗が進むに連れて細かい仕様面も決定していきますが、基本的にデザイン、機能面の仕様はそれぞれの部署を担当するクリエイターが自分で考えるということになっています。そのため、私がイメージしたものをデザイナーに伝えるわけですが、私の当初のイメージを越えてくることが多々ある。もし私が企画段階で仕様をバチッと決めてしまうとクリエイティブな表現の余地を小さくしてしまう。だから、企画段階では必要最小限のことだけ伝えれば済むのですが、これは感覚を共有できているからこそできると言えます。

TCDの強みは仕様書がないこと

また、感覚の共有度は一緒に仕事する時間や回数を重ねるごとに高まっていく傾向があります。1回目は事細かく説明しなければならなかったことが、2回目は言わなくても分かったり、3回目は逆にもっと最適な方法を提案してくれたりと、共有度の高まりに連れて製品もイメージに近づいていっているように思います。そうなると、お互いに仕事が楽です。

でも、どれだけ時間を共有しても感覚の共有度がまったく上がらない人も少なくありません。そういう人の共通点は、物事を理で理解しようとすることです。言葉で明確にしてもらわないと分からない。背後にあるものを汲み取ることができないわけです。

夫婦関係に例えると、なぜ奥さんが怒っているのかわからない旦那といったところでしょうか。言葉にしてくれないと分からないのです。しかも、矛盾なく明確に説明できなければ納得してくれない。だから、そういう人とはいくら時間を重ねても、感覚を共有するに至らないのです。

この点において私が思う優秀なクリエイターは、理論が必要なところは理論で、感覚で理解すべきところは感覚で、といった棲み分けができる人です。理は理でしかなく、この世に現存する理論以上のものを作り上げることはできません。ですが、感覚はどこまでも深淵なものに広げることができる。無限なのです。イノベーションを起こすなら、そういうクリエイターが必要です。

TCDシリーズの原点とも言える
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中田俊行

1982年大阪生まれ。2007年に独立、会社を2社経営。
WordPressテーマTCD・フォトストックサービス「マルシェ」シリーズなどを運営。

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