虚飾の繁栄か、真実の清貧か。「七つの会議」を読んだ感想

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七つの会議」を読んだので感想です。「半沢直樹」の原作者として知られる池井戸潤氏は現代の企業の問題点をえぐり出す小説を書くことで有名です。

池井戸小説のテーマに共通してあるのは企業内に蔓延る怨嗟です。部下に責任をなすり付けたり、手柄を横取りしたり、嫉妬で人を追い落としたり、権力と金に媚びたり、社内にうずまくドロッとしたものが生々しく描かれているわけです。要するに、登場人物の大半がロクでもない人達で構成されている。しかし、それが他人事とは思えない。それなりの規模の会社に勤めているサラリーマンなら、あるあるネタが詰まっていたりするわけです。だから、半沢直樹があれだけヒットしたわけですね。

ただ、ロクでもない彼らにも家庭があり、背負っているものがある。彼らには彼らなりの理由があり、生い立ちからそこに至るまでの経緯を掘り下げてあるので、どこか憎めないところがあったりするわけです。そうした人間模様もおもしろいところです。

保身が人をさらに弱くする

七つの会議で読者に訴えかけたいテーマは最後に出てくる「虚飾の繁栄か、真実の清貧か」という言葉だと思います。これについては考えさせられるというか、見事に核心を突いていると思いますね。

私自身はドロっとした環境とは縁がないですが、世間を見渡すとあらゆるところにフェイクが蔓延っていると感じます。また、本物が清貧に甘んじてしまう現実もあり、そこは悲しいですね。かと言って、本物が必ずしも清貧に甘んじるわけでもないというのが私の考えです。なぜなら、自己との戦いの先に豊かな未来があると思うからです。というか、自分と戦っている人は現時点の結果がどうあれ、すでに心が豊かだと思います。

物語中でもトップから下まで、会社という収益装置にすがりつき、嘘に嘘を塗り重ねる姿が描かれています。最終的には会社の存亡に関わる事態にまで陥っても考えを改めない。最後まで自分の保身に徹する。保身は人をさらに弱くするだけで、何も生みません。

でも、普通に考えると同じ会社に所属してるなら、同じ目的に向かって協力しあった方がいいと考えるじゃないですか。みんなで豊かになった方がいいじゃないですか。社会に認められる価値を生み出し、自分たちもユーザーも豊かになる。そういう世界に向かう方が明るいし、仕事の達成感はそういったところからしか得られない。でも、人間ってそうはいかないんですよね。身近な人に目線が行きやすいものだし、視野を広く取れない。それもまた人です。近視眼的であるがゆえに、スケールの小さい競争をして互いに潰し合う。今の日本を現しているのではないでしょうか。

登場人物たちは肝心の社会への貢献は放棄し(建前では歯の浮くようなことは言うが)、手を取り合うべき者同士の足の引っ張り合いに日々邁進している。生きる目的が人生を豊かにすることではなく、怒りや嫉妬の感情を誰かにぶつけることになっているわけです。それは彼らにとっても本意ではない。でも、一度その歯車にハマってしまうと抜け出したくても抜け出せない。というか、泥沼にハマっていることすら気づけない。すべての行動を虚飾で包むがゆえに偽物なのです。

仕事の醍醐味とは?

池井戸小説でもう一つおもしろいところは人の光の部分にもスポットを当てているところです。同小説内の第3話はメインストーリーにほとんど影響しないサブストーリーですが、仕事とは何かを考えさせる章になっています。

27歳OLの浜本優衣が会社の構造に嫌気が指して、退職を決意します。ただ、5年間何の達成感もなく、毎日同じ単純作業を繰り返した自分を悔やむわけです。自分が何かを成し遂げたという実感が欲しい。そこで退職までの2ヶ月の期間を使い、社内でプチビジネスを立ち上げるようとするのです。

プチビジネスのアイデアは同僚の何気ない不満からヒントを得ます。同僚が残業で夕食を食べられなかったと不満を漏らしたのです。社内にご飯を買いに行く暇があったら早く仕事しろという雰囲気があるから、夜食もとらずに仕事しないといけなかったわけです。それを聞いた彼女は、残業する人たちのために無人ドーナツ販売を社内に設置したらどうかと考え始めます。少しでも魅力的な職場になればという純粋な善の心からの動機なわけですね。

ですが、実際に行動に移すには問題がたくさんある。例えば、社内での決裁を通さなければいけない。新しいことに批判的でやる気のない上司たちを説得して回らないといけないし、おいしいドーナツを納品してくれる業者を見つけなければいけない。何でもそうですが、「やりたい」と思っても実際に形にするには何かしらの障壁があるわけです。

その無人ドーナツ事業を通して、どうすれば壁を乗り越えられるかを自分の頭で考え、一つずつクリアしていく。そして、乗り越えた時に感じる喜びや達成感。仕事とは何であるか、そしていかに人生を充実させる手段であるか。彼女はそれらを身を以て学んでいくことになります。そうしたビジネスパーソン向けのメッセージが所々に散りばめられているのも池井戸小説にハマりこんでしまうポイントです。

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中田俊行

1982年大阪生まれ。2007年に独立、会社を2社経営。
WordPressテーマTCD・フォトストックサービス「マルシェ」シリーズなどを運営。

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