一方で、賛否はあると思いますけど、京都も「らしさ」が数多く残っている土地だと思います。少なくとも外国人から見た京都は日本らしさが出ている観光地として知られている。私は京都だけでなく国内各地に残っている日本的な町並みはどこも好きですが、京都は日本らしさというブランドがうまく醸成されている地域として世界的に認知されているわけです。
では、バンコクのような東南アジアによくある雑多な都会はどうかということですが、これも悪くないんですね。プリミティブなところは残ってないですが、あの雑多感が「らしさ」を感じさせてくれる。大阪も梅田じゃなくて、なんばの方に観光客が集まるのは大阪らしさがあるからでしょう。
旅館でも同じことが言えると思います。老舗の旅館の多くは「らしさ」を残しているし、新しいものでも「星のや」は「らしさ」に魅了されるわけです。旅館だけでなく、ホテルもそうですね。東京ステーションホテルなんて素晴らしいじゃないですか。
逆に、「らしさ」を感じないホテル・旅館もたくさんあるわけです。例えば、昔のバブル期に建てられた旅館に多いんですが、洋風の室内に畳の部屋があったりするわけです。和洋折衷と言うほど洋室と和室が融合してないし、「らしさ」がほとんど感じられないわけです。開発者側の理想から和に洋を取り入れたわけではなく、単に時代背景的に欧米の生活様式に憧れる人が多かったから洋を入れてみました、的なブレブレな発想をそこに感じてしまうわけです。
熱海もそうですよね。昔は「東洋のハワイ」という開発コンセプトがあったみたいですが、どう見てもハワイとは程遠い。ハワイを真似した形跡があちこちに残っていてより残念な印象を受けるわけです。でも、今は徐々に人気も取り戻しているようなので、「らしさ」が出てきたんでしょうか。過去の遺物と昔ながらの喫茶店が妙にマッチして味が出てきたのかもしれません。
これはビジネスにも当てはまりますよね。自分がやっているビジネスに「らしさ」があるのか。「TCD」も他がやっていることや流行っていることを取り入れてばかりでは独自の「らしさ」なんて出なかったでしょうし、深まりもしなかったはず。周りからすると一見合理的ではない判断のように見えても、自分がやりたいようにやってきたというところに「らしさ」が出ているように思います。他のマネをしたり、影響を受けてばかりでは「らしさ」はどこかへ行ってしまいますからね。真似がだめということではないんですけどね。
だから、「らしさ」はそれだけで価値があるという話です。磨けばの話ですが。
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