サンクチュアリ
舞台は未曾有の経済成長を遂げた1980年台後半の日本。カンボジア、ポル・ポト政権の虐殺の混乱から生き延びた2人の主人公が日本に帰国した時に感じたものは日本社会に渦巻くねっとりとした閉塞感でした。彼らは腐りきった権力構造を破壊すべく、表と裏の世界に分かれて進んでいきます。主人公の一人である北条彰の「普通の人間が100年かかることをヤクザなら1年でできる」という言葉は染みますね。この言葉は命を賭けて生きているからこそ出てくる言葉なんですが、主人公の周りにいる男たちはみんな人生を賭けて何かに挑んでいるんですね。その姿に惚れてしまうわけです。
何度読んでも泣ける作品です。
サンクチュアリ(1) (ビッグコミックス)
ハゲタカ
有名な経済小説ですが、とにかく桁違いのスケールでデカいディールをやってのける鷲津政彦に惚れてしまう作品です。「ハゲタカファンド」と言うとどうしても負のイメージが付きまといますよね。経営危機に陥った企業を安く買い叩いて、最後には跡形も残らないみたいな。でも、そういう単純な構造でもないというのがこの小説を読むとよくわかります。
あと、ドラマ版は見ていないのですが、映画版は見ました。ただ、映画版の鷲津は切れ者という感じで表現されていて、人としての味の部分が表現できていないように思えました。頭がキレるキレないを超越したところに男としてのかっこよさがあるわけです。なので、小説を読むとまるで違った印象になるかと思います。
シリーズでたくさん出ているので、この順番に読むといいですよ。
ハゲタカ(上)
ハゲタカ(下)
ハゲタカ2(上)
ハゲタカ2(下)
レッドゾーン(上)
レッドゾーン(下)
ハゲタカIV グリード(上)
ハゲタカIV グリード(下)
蒼天航路
三国志と言えば三国志演義を元に書かれた横山光輝作品が有名ですが、たいていは劉備玄徳が善玉、曹操孟徳が悪玉というように勧善懲悪モノとして描かれるのが一般的です。また、三国志演義を元にした物語は歴史をなぞっているだけのものが多く、人間ドラマが抜け落ちていたりする。単に劉備玄徳という清廉潔白な人が人徳によって世を治めていくというあらすじなわけです。でも、「水清ければ魚棲まず」ということわざもありますが、劉備が清すぎて人間臭さを感じないところにどうしても胡散臭さを残してしまうわけですね。
一方、この蒼天航路の主人公は悪玉として描かれることの多い曹操なのです。正史「三国志」では曹操のことを”破格の人”と呼んでいるのですが、これは尋常の物差しでは計れない英雄という意味だと言います。著者は曹操孟徳こそが「最も人間に興味を示した英雄である」という視点から描いているわけですね。
一つ、私の好きなエピソードを抜粋します。深い闇によって眩く光り輝けるのです。
人間を大きくするのは好奇心と賢さと一塊の覇気である。そして、まず人間の魂をとらえるのは光ではなく、深い闇であった。
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