FIREするのに必要なお金はいくらか

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FIREという言葉とその意味を初めて聞いた時、私には違和感しかありませんでした。よくあるあれだろうとスルーはしていたのですが。

違和感の1番の原因は、「引退して何をやるの?」という疑問が先に来るためです。既にやりきった人が、老いによって無理が生じている状態から、今の自身の器に適応する手段の一つとして引退を選ぶ、といった話でしたら理解できます。自分もおそらくそうするでしょう。

ですが、半端な人が半端に逃げるような計画をFIREと呼んでいる。当然その後何をやってもうまくいかないし、楽しくない、不安に縛られた人生が待っている。なので、「またくだらないことが流行ってるな」と思ってスルーしていたわけです。

もう一つ、違和感を覚えるのが引退に必要なお金の見積もりが甘すぎること。

手持ちの資産や投資運用益で余生を過ごすのがFIREですよね。
ネットで調べると、FIREに必要なお金は人によるそうですが、人によっては3000万円で足りるという人もいれば、1億5000万円は必要と幅広い。「1年の支出額の25倍」という基準もあるようです。

でも、実際FIREに必要なお金は、もっと多いはず。

人生というのは、未来に何が起こるかわからない。今の年間支出が300万円としても、将来的にそれが続くとは限りません。恋人や家族を持つかもしれない。住みたいところができるかもしれないし、何をするにも変化にはお金は必要。結婚しないし、恋人も作らないと決めていても、どうなるかわからない。守りたいと思える人が現れるかもしれない。

また、若い頃は支出は少なくて済む場合が多いが、年を取ると支出は増えていく傾向があります。若い頃なら2駅分ほど歩いたり自転車で移動できても、年を取るとそうもいかない。健康状態によっては車を使う必要があるかもしれない。食べ物だって若い頃は安く済ませても問題は表面に現れにくいが、年をとるとそうでもない。介助・送迎など、人の手助けを必要とすることも増えてくる。

FIREには、傾向として年を取るとお金はかかることも見積もりに入れておく必要があるでしょう。

また、投資の運用益で生活資金を得るつもりでも、それで本当に足りるのでしょうか。過去たったの100年間だけの傾向を見れば、理論的には増えていくとも言えるかもしれないが、将来はどうなるかわからないものです。経済は経済だけで回っているわけではないので、S&P500が上がり続けるなどとは言えないわけです。

そう考えると、FIREに必要なお金がいくらかを議論するのはばかばかしいことだとわかります。

でも、それをわかった上でFIREにいくら必要なのかを無理やり挙げるとこうなります。今の物価水準が続く(ありえないですが)と仮定した場合ですが。

FIREに最低限必要なお金:

  • 20代 7億円
  • 30代 6億円
  • 40代 5億円

多すぎると思うかもしれませんが、少なすぎるかもしれません。明確に言えないのは未来の不確実性が潜んでいるためです。極論、どこまで行っても「いくらあれば大丈夫」という数字は確定できないものです。もちろん、安全性を確率的に上下させることはできますが、人の頭で未来をコントロール(想定)するのには限界があります。

FIREするということは、経験値が伸びにくいということでもあります。ということは、ある程度高い経験値、スキル、職能を積んだ状態で引退しないと、後々ニッチモサッチもいかない状態に陥る可能性がある。20代で7億円の資産を残せるような人は、それなりに経験値も高いので、後々どうにかなる可能性がある。

しかし、人はお金が入ると支出も増えるもの。貧乏時代とまったく生活レベルが変わらない人はいません。派手にお金を使う遊びをしなくても、生活の中でタクシーを使ったり少しだけ高い食材を買うだけでも生活コストは上がります。ここも計算通りにはいかないのです。

そして、人はお金が減る恐怖に弱いです。資産が1000万から2000万に増えていってる人と、4000万が3000万に減った人とでは、前者の方が人間としての気力、勢いがある。仕事がうまくいっているから飯がうまいというのはある。お金が減る恐怖が大きくなると、過剰に節約したり何かを諦めたりして、これまで良好だった人間関係や生活スタイルを壊すことにもなりかねない。

こうした不健康な状況にならないためにも、余裕をもった計画が必要です。

20代で7億円、30代で6億円、40代で5億円あれば、何かが起こったとしてもとりあえずは手持ち資金をテコにして事業を興すこともできる。状況に応じて、変化する隙間を残せる。

というわけで、そもそもFIREなど考えない方が良い結論に至ります。人がFIREに向かういきさつからして、現実から逃げたいという心理が存在するため、非常にネガティブです。「FIRE」は、人を「迷走」へと誘い込む言葉です。

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中田俊行

大阪生まれ。株式会社デザインプラスという会社を経営しています。
WordPressテーマTCDを運営したり、ブログやメルマガを書いたりしてます。

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